絵の練習をする手助けになりそうな話
この記事はTCU-CTRL場外乱闘 Advent Calendar 2018 - Adventar 9日目の記事です。
8日目担当りぶ君(昨日誕生日おめでとう)の記事はこちら。
今回の私の記事はとても文章量が多いです。
最初から順番に読んでもらうつもりで書きましたが、全部読むのは大変ですので、時間が惜しい人は目次を見て興味があるところだけ読んでください。
はじめに
みなさんは、絵を描く技術の上達に必要なことはなんだと思いますか?天性の才能ではありません。
私はこう考えています。必要なことは3つ。
『調べる』『真似する』『続ける』
です。
お絵描きに限らず、多くのことに共通すると思います。しかし、この『続ける』というのがなかなか厄介で、これができなくて上達が止まってしまう人が多いと思います。なぜ続けることが出来ないのでしょうか。時間、お金、環境……いろいろ考えられますね。これらは考えていてもどうにもなりませんから置いておくとして、別の切り口から考えてみましょう。いろいろ方法はあるでしょうが、1番わかりやすいのはモチベーションの維持でしょう。ではモチベーションを維持するにはどうすれば?それはもちろん、
お絵描きを楽しむことが大事なのです。
今回はお絵描きの楽しみ方について書きます。技術的なことではなく、どうすればお絵描きを楽しいと感じられるかや、数少ない自分の時間を使っていいと思えるようになるにはどうしたらいいか……その方法を提案します。
あくまで提案です。これは私の経験に基づいた提案ですが、それが必ずしも読者の皆さん全員に当てはまるとは限らないということをご了承ください。少しでも、お絵描きを始めたい、または復帰したい人達の参考になればと思います。よろしくお願いします。
※基本的に「デジタルお絵かき」について話します。アナログ画材によるお絵かきには必ずしも通じないことも書くと思う(判断はできません)のでご了承ください。
※この記事は弊サークルのアドベントカレンダー企画の記事です。そのため、主な読者層が情報系の大学生であるという前提で、その目線に合わせたような書き方をしている部分が一部ありますので予めご了承ください。
この記事はかなり文量も多く、また、始めたての人には共感できないであろう部分もあるため読むのが大変だと思います。そのため、読むのが面倒だと思ったら全てをしっかり読む必要はありません。自分が思うようにお絵描きを楽しみ、そして行き詰まったり、モチベーションが保てなくなってきたらまたここへ来てください。
筆者のプロフィール
名前:たち
職業:大学院生
デジタルお絵描き歴:3年半
私のお絵かきスタンス
自分が見たい・描きたいものを描くのが最優先。でも共感してもらえると嬉しい(当然だけど)。実用的なものを描くのもすき。
私にとってお絵描きとは
趣味です。
楽しそうだと思ったから始めましたし、楽しいからやってます。
現在お絵描きに興味が無いという方にとっては読むのが退屈な記事になってしまうかもしれません。また、読んで何も得られなかったという人もいるはずです。そういう人は、ご自分の趣味を大切に、そのまま楽しんでください。
この記事は、『お絵描きに特に興味のない人にその楽しさを説いてお絵描き沼に引き込むためのもの』ではありませんが、既にお絵描きに興味を持っている人や、お絵描きを趣味にしたい人、これからも趣味にし続けたいと思っている人にとっては興味深い記事になっていると思います。
モチベーションの維持方法
新しいことを楽しむ
お絵かきを楽しむためにできることはたくさんあります。まず、ペンタブレットを一度も触ったことがない人は、電気屋でも友達のものでもなんでもいいので触ってみてください。そしてWindowsに最初から入っているペイントでもなんでもいいのでソフトを開いて、タブレットの上にペンを滑らせてください。するとどうでしょう。
線が引けた!!!!
はい。未知のデバイスを使ってみること。これが新世界での新発見による知識欲消化の喜びの始まりです。最初は線が引けるだけで楽しいものです。私もそうでした。こんな感じに、線を引くだけで楽しいのです。ですが、それにもいつしか飽きが来ます。別のことをしてみましょう。パレットを選択すると……
色が塗れた!!!!
とまあ、こうやっていろんな機能を試しているだけでも面白いものなんです。ゲーム好きの人ならWiiを初めて触った時、リモコンをセンサーに向けるとポインタが画面に表示されただけで感動し、楽しいと感じたことでしょう。チュートリアル的なゲームですらめちゃくちゃおもしろかったでしょう。それと同じような感覚です。(はじめてのWiiは今遊んでも普通に面白い(特にタンク))
これだけでもペンタブを買う価値はあると思います。どうでしょう、デジタルお絵かきを初めてみようという気になりましたか?ここからは、お絵かきを続けている中で新しいことを発見する工夫を紹介します。
使ったことのない機能を試す
デジタルお絵かきの最大の利点は、イラストをデジタルに処理できるところにあります。
……いや、そんなの普通じゃんみたいな顔しないで。その『普通』にありがたみを感じることで、より楽しくなるんですよ。
元に戻す
皆さんおなじみのCtrl+Zです。そうです。あの【元に戻す】です。デジタルお絵かきではなんとぉ!この機能が使えます!
……いやだから、そんなのペイントにもExelにもどこにだってあるじゃん。何を言ってるんだ君はみたいな顔しないでください。
いやいやいや、コレが使えない世界ってのがあるんですわ。誰もがよく知っているあれですよ。
そう、現実世界です。
アナログお絵かきは現実世界で行います。現実世界はとにかく効率が悪い!一本の線を消すのにも消しゴムでゴシゴシしたり、白い絵の具で塗りつぶしたり、それが乾くのを待ったり……いや、そんなの待てない。私には時間がないんです(MGMSZK)。
時間がない人こそ、デジタルお絵かきはおすすめ!デジタルの世界はお金をかけるとどんどん効率が良くなります。現実世界じゃ、効率をお金で買うにはコスパが悪すぎますね。現実世界の利点なんて、解像度と処理速度くらいですよ。
拡大・縮小・変形・複製・反転・回転
この絵を見てください↓
アニメ絵っぽい感じの目ですね。なかなかいい感じに描けたのではないでしょうか。では、カメラを引いていきましょう……
なんだか目と顔のバランスが悪いです!描き直しますか?いやいや、現実世界ならそうするしかありませんが、これはデジタルお絵かきなのです。目の部分だけ大きくしましょう。選択して……
拡大して……
複製して反転して回転して……
縦横比をいじって……(なんか余計な線が入ってることに気付いた)
はい完成。これでいいのだ。(ハイライトの位置は手作業で直そうね)
さて、デジタルお絵かきに慣れてない人はこれを見てモヤってしたかもしれません。え、いいの?それって本当の実力じゃなくない?ズルじゃない?
ズルじゃない!!!!
そもそも、アナログお絵かきの実力とデジタルお絵かきの実力は全くの別物!と思っていただきたいッ!(今言うのかって感じだが)。
みなさんが考えている『お絵かきの実力』というのは、かなーり広義的な意味になります。言い換えるなら、『地力』というやつです。描きたい線を引くための手の動かし方(の慣れ)とか、いい感じに見せるための立体感を出すコツだとか、その他諸々の習得した基本的な技術・知識はすべて『地力』です。デジタルもアナログも、その地力に加えて専門的な知識が必要になるのです。
例えるなら、小中学校では『国語』という教科だったものが、高校では『現代文』と『古典』に分かれるような感じです。文字の読み書きやお話の読み方等の基本的知識を踏まえ、より深く読み解いていったり古文・漢文を読んだりという応用・発展の関係ですね。それらは根幹は同じものですが、別物です。
要するに菅野美穂。デジタルお絵かきは 結果(画像)が全て
機能をすべて使いこなし、より良い画素の並びを構築出来るかどうかがデジタルお絵かきの実力なのです。言ってしまえば、前述した地力はデジタルお絵かきにおいてはそこまで求められません。専門知識部分の積み上げだけで見られるもんが出来上がります。RPGで例えると、1つ食べると力が1~5上がるアイテムを頑張ってかき集めて雀の涙みたいな能力値の底上げをしたり、スキル習得のためにたくさんのザコ敵を延々と狩り続けたりする必要はあまりなく、クソ強い武器を買って超火力で通常攻撃すればいいんです。その装備を得るために、隠しダンジョンに潜って裏ボスを倒すなんて苦労をする必要もありません。剣(ペン)も盾(タブレット)も魔法(ペイントソフト)も店売りですんで。
どうでしょうか。これを読んで少しでも「自分にもデジタルイラストが描けるかも」って思ってもらえたら嬉しいです。個人的には、コラ画像を作るのが得意な人は既にそこそこに実力がついているのではないかと思っています。そうでなくても、パソコンに日常的に触れている人や情報系の勉強をしている人というのは、デジタルお絵かきの潜在的な実力において、パソコンに疎い人よりも大きなアドバンテージがあると言えます。
今の時代、スマホお絵かきなら誰でも出来るでしょうが、思い通りの絵を描くのはなかなか難しいです。それに時間もかかります。そこで、効率よくきれいな絵を描くにはペンタブ・iPadを用いたお絵かきがやっぱりとても効率的なのです。理系の大学に通っていると忘れがちですが、世の中には先程当たり前のように述べたCtrl+Zすら知らない人がたくさんいます。ある程度パソコンのリテラシーのある方々は、まだスタートラインにすら立っていないように思いがちですが、実は既に第1関門どころか第6関門くらい(適当)まで突破しているのです。
ペン・ブラシを試す
ここまでペイントソフトという表現で広い範囲の話をしてきましたが、ここでは少し限定的な話になってしまいます。CLIP STUDIOというペイントソフトをご存知でしょうか。クリスタという呼び名のほうがポピュラーですね。こいつはプログラミング言語で言うところのpythonみたいなスゴイヤツなんですが、クリスタにはペン・ブラシのワークショップのようなものがあります。こういったペイントソフトでは自分でペンの濃さとか水の混ざり具合とか、そういったものをカスタマイズして使える玄人向け機能があるのですが、他人が作って公開しているものを無料もしくは有料で使用させていただくことができます。既存のペンだけでは満足できない描き味を体験できたり、マンネリ化してきたお絵かきに新風を吹かせたり、エフェクトを描く時間を短縮できたりと、いろいろな利点があります。
皆さんは絵を描くということに対して「何か描かなくちゃいけない」「題材が思いつかないから描けない」のような思いを抱くことがある(あるいはあった)かもしれません。しかし、それは誰からも強制されていないことなのです。ただ新しいペンを仕入れて使ってみる。それだけでもすっごく楽しいですよ。
ちなみに、このペン・ブラシやエフェクト素材というものはプログラミングで例えるとAPIのようなものです。当然、1つのエフェクトをとっても自分で描くほうが楽しいという人もいますし、自分のイメージに合うエフェクトが無いという理由から、結局自分で描いたりということもあります。高級言語と低級言語のお話みたいですよね。ダウンロードしたペンをさらに改造して自分にとって使いやすいものにしたりする人もいます。そういうところが奥が深くて面白いって感じますね。
描き方に工夫をする
今まで聞こえのいいことばかり書きましたが、現実はなかなかうまくいかないものです。デジタルお絵かきは様々なことを楽してこなせます。コスパも時間効率も何もかも、お得なことばかりです。それは事実であり、今まで嘘をついていたなんてことは決してありません。しかし、それでも最初は……
最初の自分の絵はヘッタクソなのです。
線はガタガタだし、色使いもなってないし、立体感は無いし顔のパーツは大きさがバラバラ。もう、人に見せられたもんじゃない!って思ってしまいますね。
ちょっと絶望したくなる気持ちもわかりますが、ここで一度基本に立ち返りましょう。お絵かきは、楽しむことが一番!
ここまでたくさん、楽しく描くためのコツやアイディアを紹介してきましたが、それは必ず実践しなくてはならないというわけではありません。人には向き不向き・好き嫌いがありますから、私が紹介したすべてを実践しなきゃ!という強迫観念に駆られてはいけませんよ。言われたことをやったからといって、必ず楽しめるとは限りません。私の意見はあくまで参考程度にして、自分が楽しく感じられることだけをしましょう。出来上がったのが人に見せられないような下手くそな絵でも、その過程で楽しめていたなら勝ちです。次はもっと上手になっていますよ。そして、より楽しくお絵かきが出来ることでしょう。
さて本題に入ります。少々今までとは違う切り口の話なのですが、ただ楽しく描くだけでなく、自分に自信をつけることも重要なことだと考えています。先程、デジタルお絵かきは結果がすべてと言いましたね。超超超極端な話をしますが、クソ上手いイラストに自分のサインを入れてしまえば超効率よく素晴らしい""結果""が出せると思いませんか?
……もちろん、著作権保護の観点から見てそれは完全にアウトです。
では、その神イラストの上から自分で線をなぞって絵を描いたら?(トレースと呼びます) これもアウトです。では、何がアウトなんでしょうか。それはもちろん、他人の作品を横取りしていることが、ですね。しかし、それは公にだした場合の話です。自分でトレースして自分で見る分には何も悪くありません。知っているのは自分だけなのですから。逆に言えばこの『横取り感』さえなければ、トレースを公開するのは場合によってはアリだと思います。練習なんだなってわかるものとか、パロディとかリスペクトって雰囲気を出すとかですね。
ここまで掴みどころのない話ばかりで気になっていることでしょう。なんのためにそんなことをするのか。それこそ、自信をつけるためなのです。
写真でもイラストでも、なんでもいいです。完成度の高いものの上からその輪郭線をなぞってみましょう。そして出来上がったものを見てみましょう。
……これ、自分が描いたのか?
とちょっと衝撃を受けるかもしれませんが、あなたが描いたんですよ。下にお手本がある状態ですが、あなたがペンをタブレットに滑らせて描いたという事実は覆りません。
つまり!理論上は自分でもこれくらい描くことが可能!と考えられます。実際、なにもないところからその線を生み出すには物体を認識する力やイラストを描くための知識等が必要だったりしてとても大変なのですが、それでも理論上、自分にもこれだけの線が引けるのだということがわかります。私はこれがわかった時、とても大きな自信になりました。そのおかげでモチベーションが保たれるどころかそれまでよりもグンと増幅し、今でもお絵かきを続けられています。
この方法は好き嫌いが分かれると思います。お絵かきの練習の基本は模写ですから、それで頑張るというのであればそれはそれでいいと思います。しかし、トレースにはトレースでしか得られないものもあるのです。自信にもなるし、単純に線を引く練習にもなります。騙されたと思ってやってみると、何かが得られるかもしれません。
しかし、何度も言いますがくれぐれも他人のイラストを無断でトレースして描いた絵を公開する際には注意してください。というか基本的にしてはいけません。漫画やアニメのトレースパロディなんかがグレーゾーンですからね。自分の中だけで楽しむのがいいでしょう。もちろん、自分で撮った写真のトレースなんかは公開していいと思いますよ。また、内輪コミュニティの中で見せて意見を交換するのなんてとても良いと思います。
時間をかける
時間効率だなんだと言っておきながらなんだそれはと思うかもしれません。おっしゃる通りです。私達の時間には限りがあり、そしてそれはお絵かきをするためだけのものではないですね。
だからこそ、限られた時間の中で頑張ろうとか、なるべく時間を短縮しようとか、そういった提案をしてきたわけです。しかし、当然のことながら時間をかければかけるほど、イラストというものは良くなります。それは慢性的な意味でも急性的な意味でもです。慢性的というのは、長い年月をかけて練習を重ねるほどに上達するということ。急性的な意味というのは、1つのイラストを完成させるためにどれだけ時間をかけたかによって出来栄えが変わるということです。
突然ですが、次の問題を解いてください。
3 + 4 =
正解は何でしょうか。1つしかありませんね。7という答えが出た以上、この問題にこれ以上の時間をかける意味は全くありません。これをもっと良くしてみろと言われても、やりようがありません。3 + 4 = 7なのです。
しかし、お絵描きは違います。自分が出来上がったと思った絵を
「時間をかけてもっと良くしてみて」
と言われたらどうしますか?これはお絵かき初心者でも上級者でも等しく、
「もう少し手直しするか」
という考えを持つことができます。さて、その手直しが終わりました。もう一度よくその絵を見つめ直します。何やら気になる箇所が見つかりました。
ここも直さなくちゃ。
ここも……
あとここも…………
……キリがありませんね。まったくもってその通りです。お絵かきにはキリがない。最高が無いし、最低も無い。当然、正解も無いし不正解も無いのです。時間をかければかけるほど、変化をつけることが可能です。ですから、描き手が完成と言ったらそれが完成なのです。そうしないと終われません。作り始めた以上、『完成』を決めてあげないと、あなたの画像フォルダはサグラダファミリアだらけになってしまいます。なので、ちゃんと完成させましょう。これは大事なことですよ。
と、長々と回りくどくイラストを完成させることについて語りましたが……ここで一番言いたいことは全くの真逆です。
イラストは、時間をかけるほどより良くすることが出来る!
「自分のイラストに納得がいかない」「たくさん描いてるけど上達しない」「出来ないことが出来ないままだ」 そういう人ほど、1枚の絵を描くのにかける時間をもっと増やしてみてください。何日かかってもいいですから、イラスト全体に散見されるダメだと思う箇所の1つだけでも、前より良くなったと納得できるまで時間をかけて解消してみてください。その時あなたは既に上達しています。
自分が楽しく描けるものを見つける
ここからはさらにステップアップした段階です。まだお絵描きを始めてもいない人にはさらに共感できない内容かもしれませんね。
先程から何度か、『描きたいものを描く』という言い回しを使っていますが、その描きたいものがないという人もいるのではないでしょうか。ただなんとなく絵が描きたい・上手になりたい。いいアイディアが思いつかない。そんな理由で手が止まってしまう人もいるのではないでしょうか。次にお話するのは、そんな人のための内容です。少々自分語りで恥ずかしい内容ですが、悩める方のために恥を捨ててお話したいと思います。
まず例として、私の描きたいものについてお話しましょう。私が描きたいものは主に以下の通りです。
・好きなキャラクターのイラスト(応援含む)
・思いついた漫画
・自分が欲しいなーと思うエッチなやつ
・ただ描くのが楽しいから描く
もっと突きつめると、上記に該当する中でまだこの世界に無いものを作った第一人者になりたいというのがあります。例えばこのイラスト。
頑張れば何人かが思いつきそうなネタですが、せっかく自力で思いついたアイディアですから、『発祥元』として認識されたいという欲があります。
そして、このアイディアに誰かが共感してくれることや、流石だと認められることに期待します。承認欲求ですね。1枚絵でも漫画でも小説でも、私は自分のアイディアをなるべく早くアウトプットして世に出して、自身のエンターテインメント性を誇示したいという気持ちが少なからずあるのです。
絵師から絵をとったらただのメンヘラが出来上がるとはよく言いますが、本当にその通りだと思います。本当にお金のためだけにやっている人は除きますけどね。
他にも、大義名分を背負うことによるモチベーションの変化もあります。好きなキャラクターやカップリングの布教のためだったり、企画や合作・合同に提出する・寄稿させてもらうようなことになると、自分の実力が伴わないことに強く不満を抱くようにます。「あのキャラを有名にしたい」「あの企画を成功させたい」といった、『自分の好き嫌いだけでなく、他人の目に大々的に触れ、評価され、実力に伴った結果が出る』ようなことのために絵を描くとなると、好きだから・楽しいからとは違った理由……『目的達成のために上手くなりたいから描く』が生まれてきます。自分の描きたい理由に迷ってる人は、絵を通して成したい目標を設定してみるのもいいかもしれません。
エロ絵に関してはまた違ってきます。これは自分が見たい・使いたいシチュエーションにドンピシャなものが無いから自分で作るのです。もう少し的確な言い方をするなら、『自分のフェティシズムにあらゆる項目がぶっ刺さる絵』なんてものは自分にしか描けないから描くんです。
他人のイラストに加筆することで性欲を満たす人もいます。表情を変えたり、セリフを入れたり、体に落書きしたり……などなど。私もこれはやったことがありますし、自分の作品もそうしてくれて構わないと思ってます。むしろ、二次転載さえしなければそれを推奨するくらいですね。そのためのプレーンな素材とか差分をいつも提供しています。ただ、それだけでは満足できないんです。この足の角度はこう!表情はこう!差分はこれとこれとこれ!なんて欲求が出てきてしまいます。イラストコミッションを用いれば、クリエイターさんにリクエストをして有料で描いてもらうことができますが、それでも思い通りにはなかなかいかないものでしょう。ここで、「自分で描きたい」と思える人と、「まあそれくらい別にいいか。世の中にはいい画像たくさんあるんだし」と思えるかどうかで、モチベーションも大きく左右されることでしょう。
そういった理由で私は絵を描いているのだと思います。エロに関しては自分のためという気持ちが一番優先ですが、お世話になっている先輩絵師さんが好きそうなのを描いたりとか、誕生日にお互いの好きそうなイラストを描いて公開したりとかもしますし、「めっちゃ使いました!」とか「最高です!これからも頑張ってください!」みたいなコメントを貰えると嬉しくて舞い上がります。というか自己顕示欲・承認欲求で描いてるような普通の絵よりもこっちのが支持されてるの少し複雑ですね……。
ただ描くのが楽しいというのは自分でも見つけた新境地です。いえ、厳密には始めたての頃のインプット期もそのはずなのですが、今はアウトプット行為自体に面白みを感じています。ある程度描けるようになったことで、「この線はダメだ」とか「どうやったらいいんだろう」と行き詰まることが少なくなってきました。そうなると絵を描くことが快適そのものとなり、とくにコンセプトやエンターテイメント性、オリジナリティなどが含まれていないものでさえ描くのが楽しいのです。ここまで来ると本当に楽しいですよ。
さて、話を戻しましょう。結局のところ、何を描くのが楽しいのか。人に見てもらうのが楽しいなら、描いてる最中は楽しくないのか。そういう訳ではないんですけど、当然そういった疑問は出てきますよね。しかし、頭ではそう思っていても、実際に何かを作りあげる喜びをみなさんも知っているはずです。小中学校の図工の授業も、プログラミングでゲームを作るのも同じです。少しずつ、自分の作りたいものが出来上がっていくことに楽しさを見出したことがあるはずです。お絵描きは始点と終点だけでは説明できません。その途中にたくさんの、無数のチェックポイントがあって、その都度作品の完成度を見て『小さな逐次達成感』という報酬をもらっているのです。それこそがお絵描きの楽しい部分だと思います。そして、その作業の終点にある目的……結果が、自分にとって嬉しいものだと尚更ですね。自分がお絵描きをしたいと初めて思ったその理由……もっと言えばその気持ちこそ、あなたのお絵描き活動の根幹であり、自分の描きたいものの正体である可能性が高いのです。これについては一概には言えませんので、各々考えてみてください。考えてみても分からないと言うのであれば、質問・相談はいくらでも受け付けます。
イラストの公開
まず、フィードバックを得るためには誰かに見て貰う必要があります。自分の中だけで完結しているのでは、効率よく進歩するのは難しいのではないかとなんとなく思います。また、絵を描くことを生産活動と捉えれば、見てもらうことこそが消費活動なのです。消費されなくては、生産事業は成り立ちませんね。評価がどうであれ、自分の行動とそれに伴う結果に意味・価値を付与することや、達成感を得るための儀式としてもイラストを公開することには役割があると考えています。
実体験としては、公開したことにより評価が貰えなくてショックを受けたこともありましたが、たまに妥当な評価を得られたり、褒めてもらえたり喜んでもらえると嬉しいと感じられます。あなたは自分が竹を切って削って作り上げた30cmのものさしを使って測った長さを信じられますか?そのものさしに自信がもてますか?他人からの評価をもらうということには重要な意味があるのです。
評価が欲しい人:絶対に公開しましょう。評価がつかないことが評価でもあるし、もしかしたら有益なコメントがもらえるかもしれません。
いい評価だけ欲しい人:人によってはやらないほうがいいかもしれません。反応がもらえないことを必要以上に強く受け止めてしまうかもしれないですからね。
特に不特定多数の目に晒される場所は避けましょう。公開場所や相手を考えて見せるのがいいでしょう。
ただ、人に見られていることや現在の自分の力量不足を実感して、それを次に活かせる強い心の持ち主なら、たとえいい評価が貰えないにしても、前に進む手助けになるから公開したほうがいいと思います。
アドバイスが欲しい人:公開した上で、この人にアドバイスを貰えたらなーと思う人にお願いしてみるのもありかも。私はやったことありません。私でよければいくらでも聞きます。
→じゃあどこで公開するの?
当然の疑問ですね。次にイラスト公開場所の例をご紹介します。
イラスト公開場所紹介
・pixiv(おすすめ):ある程度妥当な評価を得られる。タグの付け方次第で、かなりたくさんの人の目に入る。Twitterは受動的に絵が目に入る仕組みになっているが、pixivは能動的に自分の見たい絵を探す仕組みである。そのため、何日、何十日、何百日経っても自分の絵を(サムネイルだけでも)見てくれる人がいなくならない。Twitterはタグをつけてもどんどん流れていって見られなくなっていくので、RTしたりしないといけない。RT再掲載が嫌い(あまり何度もやりたくない)って人にもおすすめ
・Twitter:バズるとめちゃくちゃ色んな人に見てもらえるが、全盛期が過ぎると誰の目にもとまらなくなる。瞬間最大風速はpixivよりも高い。Pixivと併用するのはアリだが、何かとバズりにくい初心者は妥当な評価を得にくい(そもそも見てもらえない)ので、Twitter一本でやっていき、ここでの評価だけを受け止めるのはおすすめしない。
・Discord(おすすめ):なんと、我がサークルにはお絵描き勢のためのdiscordサーバーがあります!身内以外の方には関係ない話で申し訳ないです。こういったサーバーを活用すれば、身内という限定的な範囲で公開することができるため、不特定多数に公開するときとはまた違った評価を得られます。感想・アドバイスがほしければ自分から言えばいいんです。だって身内だもん。遠慮する必要はありません。このサーバーに限らず、限定的な範囲で公開する価値は十分あるので、Discordはおすすめです。
・pawoo:pixiv公式のマストドンサーバーです。ここには全ユーザーの画像が流れるタイムラインもあり、公開範囲もTwitterより自由に選択できるため、まさに絵描きのための環境といった感じがします。しかし惜しむらくは人口ですね。Twitterに比べて人が少ないです。まあ併用して損は無いので1度は使ってみて使用感なんかを体験してみるのもいいと思います。
・Tumblr
使ってないので知らん。最近エロとかが規制されるようになって自粛退会者続出。
・Enty FANTIA等
有料プランを開設すれば、自分のイラストにお金を出してもいいと思ってくれる方からの出資を受けられます。
基本的に月額制なので、継続的な投稿が可能であり、かつ半分仕事的・業務的な意識を持って絵をかける人じゃないと運用は難しいと思います。自分は好きな時に好きなものを描きたいし、忙しい時期はとことん忙しいので難しいなと感じてます。
二次創作中心で有料プランを開設する際には権利者側とサイト側双方の規約等に注意して利用しましょう。
・SKIMA
イラストコミッションサービス。こちらは依頼を受けてイラスト単価いくら〜のようにしてクライアントの意見を聞きながら要望通りのイラストを描くためのサイトです。
実力とファンがついてきたなと思ったらクリエイターとして登録してみてもいいかもしれません。
・5ちゃん等掲示板
匿名なので遠慮なく容赦なくアドバイスをもらえる。メンタル弱い人は近寄らないようにしましょう。
・個人ブログ/サイト
自分の作品を自分で管理したい人向け。宣伝したい時はTwitterとか使えばいいと思いますが、そこでの宣伝力はフォロワー次第だろうか。普通にたくさんの人に見てもらいたいならpixivとかがオススメなので、こだわりが強い人は併用したりこれ一本にしたりお好みで。
・友達・家族に見せる
親しい仲の人に直接見せるだけ。優しい人なら面と向かって「ヘッタクソやな~」とか言ってこないと思います。思ってても、その場で突然だと場を取り繕おうとして当たり障りのないことを言ってくれるはずです。まあ、保証はできませんけど。
・その他
致した報告等をしてもらえるR-18専門のイラストサイトもあります。用途によって使い分けましょう。
モチベーション低下の予防
ここまで、モチベを上げるための話をしてきました。それで十分なのですが、ここではそれに補足として、モチベを下げないための予防策についてお話します。重複内容や当たり前のことばかりですが、無意識のうちにやらかしてしまうことがないよう、気をつけましょう。
保存はこまめに
保存忘れが原因でデータが消滅してしまい、萎えて描かなくなることも。セーブ忘れて何時間も無駄になって放置されたゲームのように、無駄になった時間のことを考えてペイントソフトを開いたりペンを持つことさえ億劫になってしまいます。実際には、それを描く過程で実力がついてるはずなので厳密には無駄では無いんですけどね。
パソコンの問題
パソコンで絵を描く場合、ガタがきているものを使うのはお勧めできません。先程もも言ったように、保存してない状態で調子が悪く強制終了しただとかの悲劇が起こってしまう環境はよくないです。予算の範囲でできる限り環境を整えましょう。
スランプ
限界やそのタイミングは人それぞれですが、スランプは平等に訪れます。初期の頃は描く度にメキメキと上達するものですが、その成長速度もすこしずつ落ち着いていき、そのうち代わり映えのしない自分の実力が気になってくるかもしれません。そういう事象は、自分の描き方を確立した人に起こりやすいです。慣れた描き方で時短を意識して描くあまり、変化のない自分の絵や実力に不満を抱えてしまいます。そうならないために、少しでもその兆候を感じたら新しいことに挑戦してみましょう。いつもよりも時間をかけて丁寧に仕上げるだとか、新しいブラシを使うだとか、描き方講座を参考にするとか……とにかく、意識して変化を付けるべきです。モチベの上げ方で書いたことと被ってしまいましたが、スランプには気をつけて欲しいです。これは上手な人でも駆け出しの人でも同じですよ。
ペンを持つ
ペンを持たない日が続くと、絵を描かなくなってしまいます。3日に5分とかでもいいので、なるべく絵を描くことを習慣づけてみましょう。
私は初期の3ヶ月ほどはほぼ毎日お絵描きをしていましたが、忙しくなってくると3日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回……と、どんどん間隔が空くようになっていきました。ある時お絵描きの楽しさに気付いて今はもうほぼ毎日ペンを握っているのですが、いつまでもその悪循環から抜け出せなかった可能性もあります。そうならない為にも、1日に線1本引くだけとかでもいいので、絵を描くこと、ペンを握ることを習慣づけましょう。ペイントソフトを毎日開くだけで偉いです。
次の段階に進む
線画がある程度出来るようになってから塗りに進みたい、という人が一定数いることは分かっています。ですが、線画ばかりやっていて上達しないことに悩んでお絵描きが嫌いになってしまうのでは本末転倒です。そういう時は思い切って塗りに進みましょう。1度も塗りをやったことない人は、1度でいいからやってみてください。線画よりも少ない作業量で完成度が格段に上がることに驚くと思います。線画段階で微妙だと思っていた作品にダメもとで色を塗ったらいい感じにみえるようになった、というのはよくある話です。ボツにしたり新しく描き始める前に、ちょっとだけ色塗りに挑戦してみませんか?
完璧を求めない
ミスや粗は、探せば無限に見つかります。それを全て潰すなんてキリがないです。先程も『完成させる』ということの大切さを語りましたが、本当に小さな粗をいつまでも探しても仕方ないです。画像を公開用に出力する時に縮小すれば見えなくなるような小さなカスみたいな消し残しを執拗に探して消そうとするのはやめましょう。たいていの人は気付きません。それに、後からミスが見つかったのならその時修正すればいいんですよ。
おすすめのペイントソフト
ここまで読んでくださった方々で、デジタルお絵かき始めてみたいと感じてくれた人がいると嬉しいです。もしそうだとしたら、次に気になるのはその始め方ですね。何を用意すればいいのかとか、何をすればいいのかという点。これが気になると思います。これについては私が体験したものの中からおすすめするという、いまいち情報の信頼性に欠けるお話になってしまうことを予めご了承ください。
まずペイントソフトですが、最初は無料のものや、無料体験版でいいです。私はデジタルお絵かきを始める際、やる気満々だったのでいきなり有料のもの(の無料体験版)に手を出しましたが、お試しということであれば無料のものでも全然使えるものがあります。ペンタブレットを買う以上、さらにペイントソフトにお金をかけるとなるとハードルが高いという人は最初は無料のものを使いましょう。ググればいろいろ出てきますので。
さて、有料のものですが、私は2つだけ所有しています。
SAIについて
私が最初に買ったペイントソフトです。次に紹介するクリスタと比較した目線での紹介になってしまいますが許して。
まず出来ることはSAIよりもクリスタの方が圧倒的に多いです。クリスタはpythonと言いましたが、SAIはC言語みたいなもんです(ペイントはアセンブラ?)。値段はクリスタ通常版よりちょい安いくらいですが、その値段ならクリスタ買うよって今なら思いますね。ですが、この描き味が好きなんだという人もいます(宗教かもしれませんが)。また、ペン先の中心点のカーソルが表示されているため、板タブを使っていてもどこに線が引かれるのかわかりやすいです。クリスタを最初に選ばなかった理由の1つがそれであり、クリスタに移行した時、なかなか慣れなかったですね。ですがそれを加味してもクリスタの圧勝だと個人的には思います。
CLIP STUDIO(通称クリスタ)について
おすすめです。後から差額アップグレード出来るので最初は通常版でいいです。最初はその多すぎる機能の全てを使いこなせないことに焦るかもしれませんが、みんなそうなので安心してください。機能が多すぎて困るなんてこともありません。
今すぐ使いこなせなくても、「こんなのできないかな」と思った時に「やっぱりあるんだ」となるのがクリスタの素晴らしいポイントです。
おすすめのペンタブレット
さて、ここからデバイスの話です。いわゆる宗教も絡んできます。情報系っぽいですね。
お金をあまり使いたくない初心者におすすめなのは……その時点で一番安いペンタブレット(以下:板タブ)です。板タブとは液晶がついていないペンタブレットのことで、タブレット上でタッチした箇所に対応するモニター上の箇所にマウスカーソルが動きます。
対して液晶タブレット(以下:液タブ)はモニターが増えるようなもので、液晶に直接ペンを滑らせることで、その動きにマウスカーソルが追従します。アナログ描きに近い感覚で描けると言われていますね。
板か液か
基本的に、液タブの方がいいです。適当な数字をだしますが、9割くらいの人が「液タブの方が何をするにも効率よく作業ができる」と言うでしょう。では板タブのメリットはあるのか……気になると思います。なくはないです。液タブは疑似モニターに直接ペンをあてるため、自分の腕で隠れて見えなくなる部分が出てきます。対して板タブは画面が隠れません。プロのイラストレーターさんでも板タブを好んであえて使っている人がいます。しかし、基本的には液タブの方がとっつきやすく、作業効率がいいとされています。勘違いしてはいけないのは、板タブできれいに書けないからといって液タブに買い替えたところで、いきなり上手に描けるようになるわけではないということです。前述の通り、デジタルお絵かきにはそれ専門のやり方があります。鉛筆描きから板タブ描きに変わってうまく描けないのは液晶じゃないからだ!と決めつけるのはよくないでしょう。ペンタブ界隈も新しいものの方が使いやすく、高性能です。私は3年間、購入当時一番安かったちっさい板タブを使っていましたが、それを使ってでも最終的には沢山の人に評価してもらえる絵が描けるようになっていました。今は液タブを使って快適にお絵かきしています。
板タブのもうひとつの利点ですが、全体的に安いというところです。液タブがクソ高いので手が出せないという人が仕方なく板タブから始める、というのが本音です。少し前まで最低でも10万くらいは普通にしましたからね。
さて、ここでもう1つ紹介しなくてはならないのがiPadです。こちらは自分で使ったことがないので使用感は分かりません。しかし、たくさん調べはしました。こちらはiPadを液タブのように使うことでお絵描きができます。iPad用のクリスタもあるくらいです。既にiPadを持っている人は、これを使えばよいでしょう。
ここで一旦まとめます。
・お金をあまり使いたくない初心者は最安値の板タブでOK
・予算が十分あるorある程度高性能のパソコンを持っている人で、長期的に見て本格的にやりたいと思うのなら液タブ
・既にiPadを持っている人はiPad版のクリスタを買うか、その他便利なアプリを入れてそれでお絵描きしよう
液タブかiPadか
ここからは少し本格的で具体的な比較に移ります。それはずばり、液タブとiPadはどちらがよいのか、ということです。
結論から言うと、一長一短であり、
お金が十分あるなら両持ちがベスト
です。
お絵描きを始める前の人は考えない(考えられなくて当然)なのですが、イラストを描くのにはかなりのメモリを使います。たくさんのデータを同時にリアルタイムに処理するのですから、考えてみれば当たり前ですね。そのため、端末のメモリが少ないと、レイヤーをたくさん重ねたり、多くの計算を要するブラシを使うことでカクつきます。iPadの最新モデルがどの程度のメモリを有するのかは詳しくは知りませんが、この点ではそこそこのスペックを有するデスクトップパソコン(液タブ)に軍配が上がります。レビューなども見ましたが、恐らく弱いiPadでは綺麗で繊細なイラストを描くのには満足いく性能であるとは言えないと思います。もちろん、解像度が低くてもよかったり、キャンバスサイズが巨大じゃなくてもよかったり、レイヤー数が少なかったり、白黒・グレースケールの漫画原稿なら全然ありでしょう。しかし、パソコンに比べて用途が限定されてしまうということです。
次に、アップルペンシルの存在です。iPadでお絵描きをするにはアップルペンシルを用います。こちらは充電式のペンであり、電池が切れると充電するまで使えません。板タブや液タブにも充電式のペンはありますが、私は充電式のペンを使ったことがありませんのでネットで拾った声に頼ります。曰く、
充電不要ペンの方が完全上位互換
とのこと。 日本では ワコムが特許を持っているそうで……まあさすがと言ったところ。さらに残念ながら、アップルペンシルにはもうひとつの欠点があります。それはペンの細さです。アップルペンシルは恐らくお絵描きのみに使う目的で設計されてないのでしょう。そのためか、かなり細いです。ペンタブに付属するペンはそれに比べて一回り太く作られています。理由は、長時間の作業で指を疲れにくくさせるためです。私は最長で10時間ほどぶっ続けで作業していたことがありますが、細いペンで10時間は無理だと思います。確実に指が疲れて描けなくなるでしょう。その点もペンタブが勝っている点となりますね。ただその点に関してはグリップを付けることで解決する方法もあるそうです。そらにより別の不満が発生するとかいう噂も聞きましたが、定かではありません。
また、液タブはパソコンに繋ぐので、資料を集めたりデータの管理をPC上で行えるというのも気に入っています。これはiPadに慣れてる人ならiPadの方が良いと言うのかもしれませんね。まあよくわかりません。
大きな画面で描きたいという場合は、液タブしかないでしょう。ただ、大きなものはかなり値段が張ります。私はそこまで画面の物理的な大きさにはこだわらないので、13インチくらいで満足しています。その程度なら液タブの方が安いです(パソコン入れたらパソコン+液タブのが高いよ)。
これだけ聞くと、iPadにいい所がないように聞こえてしまいますが、そんなことはありません。まず第一に、基本的に液タブ同等のことができるのです。メモリがどうとか話しましたけど、使い方次第ですからね。そして何よりの利点が、持ち運びがとても楽ちんだということです。iPadがあれば、いつでもどこでもお絵描きを楽しめます。忙しい日常の合間を縫って隙間時間に原稿を進めたりするのにとても役立つでしょう。また、誰かの家やコワーキングスペースに集まってお絵描き会なんかをすることも出来ますね。ラフ程度ならベットでゴロゴロしながらでも描けるという話も聞きました。iPadはこの持ち運びが楽という点だけで買う価値があります。そういうわけで、両持ちがベストなんですね。また、iPadは当然、iPadとしての機能も有していますから、単純にiPadもペンタブも欲しい人には最適解となるでしょう。
追記(12/20)
知り合いのiPad宣教師がiPadについていろいろ教えてくれました。彼はこれまで一般的な板タブを使っていて、iPad pro10.5に乗り換えたという経緯があります。その視点から語られたiPadのメリットとデメリット、というのはとても参考になると思います。
iPadメリット
・iPadは板タブと比べて場所作ったり接続を確保する必要せずベッドで使える
・A4レイヤー30くらいのお絵描きなら動作が重いと感じたことがない
・データフォルダから画像貼れるのでトレスとか落ちてる画像の利用が簡単
・iPadである
iPadデメリット
・ソフトがApp Storeのもののみ限られる
・外付けモニターに繋いで作業領域を広げられない(出来るけど面倒)
・キーボードショートカットが標準では使えない(使えるけどBTキーボード買う必要があるし設定が面倒)
とのことです。自分には無い観点だったのでとても参考になりました。また、精度に関しても自分には想像もつきませんでした。Apple Pencilは独自の方式でBlueTooth接続をしているらしいです。プロのイラストレーター曰く、「そこまで違和感ない」と言っているらしいです。つまり素人には区別できないくらい精度がいいんじゃないでしょうか。液タブもピンキリで、線を引くだけで違和感バリバリのものもありますから、既に沢山の人が使っていて炎上していないiPadは十分な性能と言えるでしょう。
上で私が語っていた充電に関しては、15秒充電で30分使えるので気にならないとのこと。それまで使っていた板タブはいざ描こうとした際に充電切れててまた今度……ってことが多かったみたいなのでそれに比べたら革命ですね。
自分としては、何時間もぶっ続けで作業しない限りはiPadで十分だと思いました。ぶっ続けで作業というのは食事も取らず睡眠も取らず、ペンを置くのはトイレのときだけという人のことです(何度かやったことがあります)。
要するに菅野美穂、先程は「充電不要ペンは完全上位互換!」と、充電不要ペンのプラスの部分を強調しましたが、Apple Pencilがマイナスだと言うわけではなく、むしろ大差ないレベルの優秀なプラスだと訂正しますということです。ポケモンで例えると、追記前に書いていたのは「充電不要ペンはガブリアス!Apple Pencilはガバイト!」という内容で、今は「充電不要ペンはガブリアスだけどApple Pencilはフライゴン!」と言いたいってことです。
(追記ここまで)
液タブとiPadの比較
・処理速度の優劣は端末の性能で決まる
・液タブの性能はピンキリ
・iPadは安いモデルだとメモリ等の端末性能が十分とは言い難い
・アップルペンシルは充電式かつ細いため、一般的にペンタブの充電不要ペンに負ける(対策としてグリップ装着推奨)
・液タブならパソコン上でデータの管理が可能
・でかい画面で描きたいなら液タブ一択だが、その分お金がかかる。
・iPadは持ち運べるという最大の利点が強い
・iPadはベッドの上でゴロゴロしながらラフ画描いたりもできる
・iPadはそもそもiPadである
利点と欠点は表裏一体だったりします。あえてどちらの利点がどうとは書きませんので、これらの情報をもとに自分で合いそうな方を考えてみてください。
液タブの性能比較指標
次に、液タブ界隈内での性能比較です。
ペンタブを作っている会社と聞いて、多くの人がまっ先に思い浮かぶのはワコムでしょう。ワコム社は様々なノウハウを駆使し、PCドローイングをマウスで行っていた時代からペンタブの時代へと、文字通り新時代を作り上げたのです。ペンタブ業界は要求技術が多く難解であり、ワコム社がいる以上あまり多くの利益を期待できないということで、新規参入のしにくい業界でした。そのため、長きに渡りワコム社は栄華を極めていました。いわゆる独占市場状態が続いたのです。私がデジタルお絵描きに手を出した3年前にはやはり液タブは高く、格安の板タブを買うのがやっとでした。それもワコム社の製品でした。液タブは最安値で10万円以上が相場だったこともありました。なかなかこれから絵を勉強する人が初期投資で出せる金額ではありませんね。それにiPadの方が全然安いです。しかし、最近になって中国の企業やその他の企業が参入してきました。それにより一気に価格競争がスタートし、ワコムの天下は終わりを迎えようとしています。私のような貧乏院生でもちょっとバイトを頑張れば手が届くほどになったのです。今はそういう時代だということを覚えておいてください。
液タブの評価項目はいくつかあり、その中でも特に注意して見るべきポイントを抑えましょう。
①値段
何はともあれまずはお金。予算と相談です。
②対応システム
自分のOSに対応してなくては使い物になりません。しっかり見ておきましょう。
③傾き検知
ペンがタブレットに対してどれだけ傾いているかを検知する機能です。これは幅が大きいほど高性能なのですが、数値を見ても自分の使用感に合うかどうかは分かりません。かと言って、そこまで重要度も高くはありません。しかし、たまにこれが弱すぎて微妙というものもあるので、欲しいペンタブに目星をつけたらTwitterなどでサーチして情報収集しましょう。
傾き検知が出来ると何がいいのかと言うと、描く時にペンをいっぱい傾けてもカーソルがおかしな所にすっ飛んでいかなくなります。と言っても、めちゃくちゃ傾けて描く人はほぼいないと思いますし、描いててそんな状況はなかなか起こらないです。ただし、これが弱すぎると描いている最中のペンの動きのせいで、カーソルが踊るようにあちこち動いてしまったりするようです。ある程度は必要な項目ということですね。
④筆圧
ペンをタブレットに押し当てた際の力の強さを、線の太さや色の濃さにどれだけ反映させられるかの値です。
現在主流のペンタブは、主に2048、4096、8192の3段階のどれかです。8192なら文句なしでしょう。4096でも十分です。2048なら現在自分が使っているデバイスと比べたり、価格と要相談です。
⑤ペン
充電不要だと最高ですね。あと太いと長時間の使用でも指が疲れにくいです。細い場合はグリップなどを装着しましょう。
⑥色域
発色の精度を表します。Adobe RGBという色域の色を何パーセント表現できるか、という指標を多くの液タブが載せています。安物の多くは70%台で、そこそこ性能が良くて80%台、高性能でないと90%台はなかなかありません。発色はカラーイラストの出来上がりに影響しますので、なるべく高い方がいいですね。
個人的におすすめの液タブ
ここまで読んでもなんのこっちゃという人もいるでしょう。結局どれを買えばいいんだよって思うでしょう。一般的な意見を言えば、予算と相談してできるだけ高性能のものを買いましょう、というありきたりなものになってしまいます。そこで、私が今年9月に買った液タブを紹介しようと思います。まあ、レビューっぽいことできるのこれだけですし。
Kamvas Pro13
先ほど自分が紹介した指標についてみていきましょう
①値段
定価は約43000円です。セール時だと約3万円ですね。げきやすです。
ちなみに、これと同等の性能をもつワコム社のCintiq Pro13は最初定価14万で、これが出てから9万に値下げしました。それでも全然Kamvas Pro13のが安いですけどね。
②対応システム
Win 10/Windows 8/Win7/Mac OS最新バージョン、WindowsとMac両方とも対応してます。文句なしですね。
③傾き検知
対応しています。傾き検出±60°で、左利き用設定も可能です。
④筆圧
筆圧8192です。文句なしです。
⑤ペン
充電不要です。あと太くて持ちやすい。ペン先もデフォルトで10本ついていました。
⑥色域
Adobe RGBカバー率、驚異の92%です。これに関してはライバル視していたであろう商品であるワコム社のCintiq Pro13の87%を越えています。この値段で92%は他にありません。
※ここに書いたことは書いた時点での情報を元にしていますので、時と共に変化する内容も含まれます。ご了承ください。
なんだかHUIONの回し者みたいなレビューになってしまいましたが、本当に素晴らしいですよこの子は。使ってて不自由していません。ただ、ペン先が押し込み型で、沈み込むようになっているため、それがどうしても苦手という人はワコム社の9万円の方を買うと良いと思います。でも、すぐ慣れると思いますよ(僕は慣れた)。
余談①:私のPCスペック
PCのスペックについても一応書いておきます。一般的に要求される最低限のスペックと、私のPCのスペックとその使用感についてです。
OS:Windows10(64bit)
メモリ:8GB(最低ライン)(最重要)
CPU:intel Core i7
グラボ:GeForce970
モニター:普通の
モニターの発色とメモリの多さに気を使っておけばok。といっても、液タブならモニターは関係ないですけどね。
メモリはいくらあっても困りません。というか、8GBでは物足りないと感じています。具体的にどんな場面で物足りないかといいますと……
・レイヤー数が200・300と増えてきたとき
・dpi(画素数)の大きいキャンバスで描くとき
・大きなエアブラシを使うとき
・アニメーションイラストを作成するとき
ですね。こういった作業を行わない人は問題ありません。また、それに気を遣いながら作業すれば問題ないのですけどね。ただ、やはりメモリは大いに越したことはないです。
余談②:グラボについて
ペイントソフト上にて3DCGを扱わない限り、基本的には関係ないです。プロのイラストレーターはQuadroの高性能のものを使います。理由は表現出来る色の数がGeForceシリーズとは桁違いだからです。例えば、グラデーションの細かさをあげればあげる程に必要な色の種類が増えることは想像できますね。GeForceシリーズで表現出来る色の種類は1677万色ですが、Quadroシリーズは10億6433万色です。3Dモデルのシェーディングや印刷物の制作なんかには影響してくるようですね。
と言っても、何度も言いますが3DCG を使わない限りはそんなに気にしても仕方の無い項目です。お絵描きの他に、ゲームの趣味があるのであればGeForceシリーズをおすすめします。それでも十分ですし、なくてもそんなに影響ありませんので。大事なのはメモリとCPUです。
終わりに
ここまで読んでくれた皆さん、いかが……どうでしたか。自分では、調べても引っかかりにくいような話が書けたかなと思っています。私は自分の体験を通して、より近い距離でみなさんにお絵描きの楽しさや、楽しみ方を伝えたいと考えて書きました。一般的な教本や描き方講座なら買ったり調べれば知見が得られると思いますが、同じ大学生という立場でゼロからお絵描きを始めて、やってみる上でのコツだったり効率の良い方法というのは、なかなか見つからないでしょう。これまで書いたことは、ほとんど私の持論であり、私が3年間描き続けた中で様々なものから知識を吸収して作り上げた知恵です。私もまだまだ未熟ですし、内容に偏りもありますが、きっと少なからずみなさんの役に立つと思います。
この記事のこと以外でも、私はいつでも質問を受けつけますので、環境構築で不安なことの相談や、描く技術的なことでもなんでも構いませんので気になったら是非聞いてみてください。期待されるくらいの回答はできるはずです。
それでは、長々と読んで下さりありがとうございました。お疲れ様でした。
あっ、そうだ(唐突)
アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ PV第2弾
次回(12/10)はしゃりん君です。お楽しみに!